2017年2月23日木曜日

11項目の長所を具体的に見る(4)

日本の長所を11項目にまとめて検討しているが、最後は次のようなものであった。

11)マンガ・アニメなどポップカルチャーの魅力とその発信力

アニメやマンガ、ゲームを中心に日本のポップカルチャーが世界に受け入れられているのは、よく知られた事実だ。これらを通して日本の文化そのものへ関心を広げていく若者も多いという。日本文化のユニークさが、それを背景としてユニークなポップカルチャーを生み出し、それらが全体として世界を魅了しているのだ。マンガやアニメに惹かれるだけではなく、それらを生み出す、日本という国の文化や人々の生き方に引き付けられ、共感を感じる。その全体が、日本のポップカルチャーの魅力となり、発信力となっているのだ。では、日本の文化のどのような面がポップカルチャーに反映し、魅力と感じられ、憧れられているのか。

日本のマンガ・アニメの発信力の理由を以下のような五つの点に注目して整理してみたい。

①生命と無生命、人間と他の生き物を明確に区別しない文化、あの世や異界と自由に交流するアニミズム的、多神教的な文化が現代になお息づき、それが豊かな想像力を刺激し、作品に反映する。

②小さくかわいいもの、子どもらしい純粋無垢さに高い価値を置く「かわいい」文化の独自性。

③子ども文化と大人文化の明確な区別がなく、連続的ないし融合している。

④宗教やイデオロギーによる制約がない自由な発想・表現と相対主義的な価値観。

⑤知的エリートにコントロールされない巨大な庶民階層の価値観が反映される。いかにもヒーローという主人公は少なく、ごく平凡な主人公が、悩んだりり努力したりしながら強く成長していくストーリが多い。

これら5項目を詳しく検討するのは別の章に譲るとして、ここでは「初音ミク」現象に触れながら、上の5項目がいかに日本のポップカルチャーの特徴をなしているかをかんたんに見ておきたい。

まず初音ミク現象について詳しい情報については、下の動画がおすすめ。part6まであるが、ぜひ追って見てほしい。

【HD】初音ミクの世界(World of HATSUNE MIKU) part1

初音ミクは、もともと音楽のソフトとして発売されたが、そのキャラクターをこれほど反響があるとは発売元の会社も考えてもいなかったようだ。しかしキャラクターはイラストや動画として二次創作され、予想もしなかった盛り上がりを見せていく。多くの初音ミクのファンが、音楽ソフトに添えられたキャラクターに命を吹き込んでいく、文字通りanimateしていくプロセスがすごい。ファン一人ひとりの並々ならぬ情熱が、ソフトによる固有の声をもったヴァーチャルアイドルを、あたかも実在するかのように作りあげ、そのアイドルのライブに熱狂し始めたのだ。そして日本のポップカルチャーに関心を持つ世界の若者たちが、日本で始まったこの現象に注目し、ライブの歌やダンスの質の高さに驚き、もっと詳しい情報を得たい、自分たちもライブに参加したいと待ち焦がれている。

日本のポップカルチャーの発信力の秘密という観点から、この現象を考えてみよう。

まさに①のアニミズム的なものへの親和性が、私たちの心に流れているからこそ、ファンの一人ひとりの力を結集してヴァーチャルなものに命を吹き込んでいこうとする動きが、こんなにも盛り上がるのではないか。

そしてヴァーチャルアイドルが、こんなにもファンの心をつかむひとつの理由が、動きがあれほどリアルでありながら、どこか現実ばなれした純粋無垢なかわいらしさの象徴のような表情をしていることにあるのではないか(②)。あれが、もっと生々しい現実的な顔をしていたら、これほどの盛り上がりはなかったかもしれない。

初音ミクらは、音楽ソフトにで作られた音声で自由に歌い、信じられないくらい上手にダンスをする「お人形さん」なのだが、もはや子どもではない若者たちがそれに熱狂することに何の違和感も感じない(②、③)。

おそらくキリスト教文化の本流は、こうしたすべてのことに本来抵抗感をもつので、ヴァーチャルアイドルに熱狂するというような動きは、その文化の内側からは生れて来にくいだろう(④)。

さらに日本語という共通の言語をもった、巨大で知的な庶民が、コンピューターテクノロジーを駆使して、協力しながら創作していったからこそ、ヴァーチャルアイドルのクオリティーの高いパフォーマンスが実現したのだ(⑤)。

こうして考えてみると、日本のポップカルチャーの発信力の秘密のすべてが、初音ミク現象の背後ではたらいているといえそうだ。


《関連図書》
★『ユリイカ2008年12月臨時増刊号 総特集=初音ミク ネットに舞い降りた天使
★『できる初音ミク&鏡音リン・レン VOCALOID2 & Windows Vista/XP 対応 (できるシリーズ)

 

11項目の長所を具体的に見る(3)

日本の長所として暫定的にまとめた11項目のうち、11)を除く残りの4項目

7)清潔さ(ゴミが落ちていない)
8)環境保全意識の高さ
9)食べ物のおいしさ、豊かさ、ヘルシーなこと 
10)外来文化への柔軟性

については、今あえて説明を加える必要はないだろう。私としては、それぞれの項目について日本人の独りよがりではないといえるような、ある程度客観的なデータによる裏づけが欲しいと思っている。安全性などは犯罪率のデータを挙げれば歴然としているが、他はなかなか難しい。そこで外国人などによる感想などを多く集めることが、ある程度の裏づけとはなるだろう。

8)環境保全意識の高さ、については各国を比較した意識調査の結果があったと思う。見つけたら紹介したい。9)食べ物のおいしさ、豊かさ、ヘルシーなこと、についてはミシュラン東京なども一つの裏づけだし、最近の和食ブームもその表れだ。これについては、カテゴリー・世界に広がる日本食にもある程度集めてある。今後も積極的に日本食関連の記事を掲載していきたい。

さて何回か取り上げてきた、『続 私は日本のここが好き!  外国人43人が深く語る』から、「日本の長所」全体にかかわる素晴らしい感想を紹介したい。滞在16年のトルコ人男性である。

「日本に住んで感じる日本の良さとして、いつも思うことがあります。ひとつは、この国には現代の人が欲しいと思っている、快適さのすべてが整っていることです。それは清潔、安全、マナー、便利さなどであり、近代的な住みやすい国ですね。その一方で日本は伝統を重んじ、お盆や正月などの昔からの行事を継続していることには感動しました。国の歴史、伝統的芸術や芸能、風習など、日本独特の文化が文化財としてだけでなく、人々の手によりよく保護保存されています。」

「しかし今の日本人は、日本という恵まれた国にいるということを、あまり自覚していないように思えます。‥‥敗戦後にゼロの状況から出発し、ここまで発展した日本人の資質も含め、世界から見れば稀なほど、すばらしい国と素晴らしい国民です。これらを自覚すれば、自然に感謝の気持がわいてくるのはないでしょうか。」

「日本人は、現在とてもあせっているように見えます。礼儀正しく、謙虚で静か、知的で多くの好奇心を持ち、外国人に対しても公平というとことが、ほかの国とは違いうと感じます。もっと自信を持ち、このような気持を大事にしていれば、大きく変らなくともいいのでは。なぜなら日本人は、何かあれば持ち前の良さを発揮し、みんなで危機を乗り越える力がありますからね。」

日本が、世界の国々の中でも、このように恵まれた国などだということを、何よりも今の子どもたちに知ってもらいたい。そして自信と誇りをもってもらいたいと切に思う。

最後に残った、11)マンガ・アニメなどポップカルチャーの魅力とその発信力

については項を改めて論じたい。

11項目の長所を具体的に見る(2)

11項目でまとめた「日本の長所」、今回は次の二つの項目についていくつか外国人の発言を挙げる。

5)謙虚さ、親切、他人への思いやり
6)あらゆるサービスの質の高さ

「日本のよい点は、協調性があって組織力があってどちらかというといろいろな約束事というものを守ろう、規律をなるべく重んじようという風潮があるので、がっかりさせられることが少ない社会だとおもいます。よその国では、本当の実力が8なのに10だと見せる傾向がある。日本は本当に実力が8なのに7・5ぐらいに見せる傾向があるので、奥ゆかしいと思います」(在日韓国人の男性、『ハーフはなぜ才能を発揮するのか (PHP新書)』より)

「日本の好きな点は、日本人の態度、謙虚さ、親切さです。日本人は他人に対して思いやりが深いと思います。よその人がどのように考えているかを察するような行動が多いし、他人を傷つけないという思いやりが非常に強いと思います」(日米のハーフの男性、同上)

「職場の日本人スタッフは『どうしてこんなことが分からないの!』と言わず、見返りを求めることもなく、分かるまで親切に教えて下さいます。
 例えば銀行などの窓口で、日本では、外見で人を差別することなく、心地よい対応をしてくれます。チリでは、外見が悪いとひどい扱いを受けるのです。
 希望を持って頑張れば必ず報われる国で、『日本人に似てきた』と言われるようになった私を、母もきっと喜んでくれると思います」(チリ人の女性、『続 私は日本のここが好き!  外国人43人が深く語る』より)

「次に日本と私の国が違うと感じ、素晴らしいと感じている点は、『公共サービスを受けるよきに公平なこと』です。具体的に言うと、例えば市役所に行って、何か手続きをする時に、職員の中に個人的に知っている人がいなくても、または、便宜を図ってもらうために特別な贈り物や賄賂を払わなくても、私は他の日本人たちと同様に、公平に扱ってもらえます。たとえ私が外国人でも、窓口ではちゃんと対応してもらえるし、ほうっておかれたり、わざと時間をかけて後回しにされてしまうこともありません。」(インド人女性、夫のレストラン手伝い、同上)

「日本人はとにかく親切でやさしくて、私は大好きです。10年近くこの親切さに慣れ親しんできたので、もう私は韓国には住めないかもしれません。韓国に帰るとイライラしてしまいます。例えば、日本のサービス業。デパートなどに行くと申し訳ないくらい店員さんが親切です。」(韓国人女性、主婦、同上)

中国の旅行者も、日本の店員の応対のていねいさ、親切さは驚きらしく、日本で女性店員が親切に、ていねいに応対してくれたとしても、それはあなたに気があるからではないから、くれぐれも誤解のないようにと注意を促すブログもあるほどである。

2017年2月22日水曜日

11項目の長所を具体的に見る(1)

日本人にとって当たり前と思われていることが、実は世界にとって当たり前ではない。それでいて日本人は、そのことの重要性をあまり気づいていない。しかし今、日本人自身が自分たちの文化やそのユニークさとその意味をもっと自覚すべきときに来ていると思う。日本の社会や文化、そして日本人の人間関係に含まれる見えない長所、日本人が多かれ少なかれもっている道徳心、好奇心、改善や創意工夫の意識、仕上げに凝る、仲間を助けるなどの姿勢などを、日本人はしっかりと自覚し、それを守っていくことがますます大切になっている。

それらは、日本人にとって当たり前すぎることなので、これまではきちんと分析して対象化する必要など感じなかったかもしれない。しかし、自分たちの文化や伝統にどのような意味と価値があるのかを知らずにいると、グローバリズムという名のもとに国外から押し寄せてくる変化の波によって、それらがかんたんに失われてしまい、取り返しのつかないことになる。だからこそ、これからはそれらがどれほど「価値ある資産」としてプラスの意味をもっているのかを、分析し、可視化し、体系化することがきわめて重要となる。分析され、その資産としての意味が自覚化されることで、その長所を守り、さらに活かし、伸展させていく方法も見えてくるからだ。

私は、これまでこのブログで、不十分ながらそのきっかけとなるような試みをしてきた。たとえば日本の長所として次のような11項目を挙げて見た。これらは、日本を訪れたり、住んだりしている多くの外国人の感想などをもとにして、その最大公約数的なものを整理したものである。

1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 
3)治安のよさ、犯罪率の低さ 
4)勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること
5)謙虚さ、親切、他人への思いやり
6)あらゆるサービスの質の高さ
7)清潔さ(ゴミが落ちていない)
8)環境保全意識の高さ
9)食べ物のおいしさ、豊かさ、ヘルシーなこと 
10)伝統と現代の共存、外来文化への柔軟性
11)マンガ・アニメなどポップカルチャーの魅力とその発信力
今回は、このうち1)から4)の項目を具体例を示しながら見てみよう。

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1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 

日本人が、礼儀正しく、またその行動に規律や秩序があることは、多くの外国人によって繰り返し指摘されており、いまさら取り上げる必要もないほどだ。ここでは二つだけ関連する記事を取り上げる。
◆米エクスペディアホールディングスが世界各国のホテルマネージャーを対象に行った国別観光客のイメージ調査において、日本人が去年まで3年連続で『世界最良の旅行客』に選べれている。

日本人観光客は「礼儀正しい」、「行儀の良さ」、「部屋をきれいに使う」、「騒がしくない」、「不平不満が少ない」の5項目において一位を獲得しての受賞であったが、『日本人のマナー』は世界各国で定評があるようだ。今年も同様の調査が行なわれて発表されたのか、調べてみたが、見つからなかった。ちなみに、2009年発表のものについての記事をリンクしておく。
日本人が3年連続で「世界最良の観光客」に――海外ホテル予約のエクスペディアが発表・2009年7月13日

あるアメリカ将軍の驚き
『世界中にアメリカ軍の基地があるけれども、朝八時半に従業員が全員来る基地は日本だけです。つまり遅刻がない。それは日本だけです。五時半に帰ったあと、備品が一個もなくならない基地も日本だけです。』
日本人の人間観・その長所と短所(2)
性善説に立って人を信用することを前提とした社会、基本的に人を信用して行動する関係。これが日本社会の秩序や治安のよさに関連していると思われる。

3)治安のよさ、犯罪率の低さ
「これまでに、パリ、ベルリン、ロンドンにも住んだことはありますが、東京の安全性は特別です。通常、大都市で生活するときは緊張が伴います。街を歩くとき、基本的には行き交う人々と視線を合わせないほうがいいと言われています。しかし、東京では初めからそうした緊張は感じませんでした。新宿や渋谷など、いろいろな人々が行き交う繁華街でさえも、大都市で安心して生活でき――そうした素晴らしい気持は、東京でしか感じられません。」(フランス人女性『続 私は日本のここが好き!  外国人43人が深く語る』より)

「イギリス人の父がいっていたんですが、父が日本に来た理由というのが、最初は転勤であったにもかかわらず、仕事まで辞めて日本に移住してしまったのは、安心して暮らせるからということだったんです。‥‥父はロンドン出身で、僕も幼い頃、そこに暮らしていたが、治安の悪い場所だったんです。母が毎日、買い物に行くと誰かにレイプされるんじゃないか、ひったくりに遭うんじゃないかとくことを、心配しなくてゃいけないところだった。それが日本に来たら、ビーチに行ってもそのまま浜辺に荷物を置いていられるとか、ロッカーの鍵をしまなくても盗まれないとか、電車に乗っていてもひったくりに遭わないとか。父は、家族を育てるのであれば、そういう心配がないところがいいと思い、20年以上も日本に居住することになってしまったわけです。僕も安心して暮らせるというのが好きですね。」(日本人母とのハーフの青年『ハーフはなぜ才能を発揮するのか (PHP新書)』より)

なお、日本はかつては安全だったかもしれないが、最近は犯罪率も増加しているというのは、間違った印象に過ぎないので、以下をご確認いただきたい。日本の犯罪認知件数・検挙件数等

 4)「勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること」に関連するもの。
日本人のここが好き
「国民全員が国の現実に責任を負っているのだ 真面目で勤勉、そして「質」をとても大事にすると思います 皆が一体となって一つの事に立ち向かい、成功させていくことが、日本人が自分の仕事に責任感を持ち、夢中になっているかということ」
日本人の仕事への責任感は世界一
 「どれほど日本人が自分の仕事に責任感を持ち、夢中になっているかということ。日本人はそのことに誇りを持って欲しい。世界的に素晴らしい現象なのだから。自分の仕事に誇りと責任を持つという点で、世界一なのだから。その素晴らしさを意識してほしい、ということであった。」
平凡な日本人のレベルの高さ

引き続き、『続 私は日本のここが好き!  外国人43人が深く語る』から、日本人の仕事への態度を評価する事例を紹介しよう。

「まず、第一に日本人の仕事への熱心さです。これは、私の家族がインド料理のレストランをやっていて、日本の人たちと一緒に働いているので特に感じることです。もちろん、私の家族たちも一生懸命働いています。でも、それは私たちのお店だからです。日本人たちは、雇われて仕事として働いているにもかかわらず、同じように一生懸命働いてくれます。夫は日本人の仕事に対する誠実さや真面目さを、とても信頼しています。店でアルバイトの人を雇う時には、知り合いのインド人より、知らない日本人の方がいいと言っています。日本人の真地面な仕事ぶりに関心し、ちゃんと働いてくれると信頼しているからです。」(インド人女性、夫のレストラン手伝い、滞在4年)

さらに、店の改装をした時にも、インドとはまった違っていて驚いたという。夫が現場に行ったのは、改装開始時と終了時の二回だけ。それでも約束の期日に完璧に終了していた。インドだったら、工事中に夫がずっと監視していないと、進行が極端に遅くなってしまう。日本では、こういう仕事でも、安心してすっかり任せておけるのかと本当に驚いたというのだ。

「私が日本で特に素晴らしいといつも関心している様々なことは、すべて、この『日本人の仕事への誠実さ』によってもたらされているのだと気づきます。電車やバスが時間どおりにちゃんと来ることや、日本製のモノの品質が信頼できることや、店や通りがいつもきれに保たれていることなど、日本のいいところすべてに、共通して現れています。一人ひとりが、誰にも見られていなくても、自分のやるべきことをやろうと真面目に努力している。それが日本をここまで進歩させた、優れた国にしたのだと思います。」(同上)

もういくつか例を引こうと思っていたが、長くなったのでここで止めておこう。ここでは、こうした日本人の特徴がどこから出てくるかに、かんたんに触れておこう。その根底にあるのは、やはり日本人が異民族によって征服、支配された経験を持たなかったことだろう。それが日本を、階級に分断されな平等社会にした。一部のエリートによって動かされるのではない庶民中心の社会にした。だから庶民は、どんな仕事をするにせよ、自分たちがそれを作っている、世に送り出している、社会の一角を支えているという「当事者意識」(責任感)を持つことができる。自分の仕事に誇りや、情熱を持つことができる。奴隷は、そういう意識を持つことができない。日本のユニークさは、奴隷制を持たなかったことにも、ひとつの要因があると思う。

2017年2月21日火曜日

日本の長所を11項目にまとめる

日本企業は、「見えない資産」(インタンジブルス)の宝庫であるという(『「見えない資産」の大国・日本』)。しかし、日本企業の「見えない資産」は、日本社会や日本文化の「見えない資産」を基盤にして成り立っている。それを少しでも多くの人が自覚して、私たちの「資産」を失わず、さらに育てていくことがますます重要になっている。

私は海外に長期滞在したなどの体験はないが、インターネットや本などで触れるかぎりでも、日本の社会が全体としていかに多くの長所を持っているかがよくわかる。その長所と思われるものを、とりあえず列挙してみよう。

 1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 
3)治安のよさ、犯罪率の低さ 
4)勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること
5)謙虚さ、親切、他人への思いやり
6)あらゆるサービスの質の高さ
7)清潔さ(ゴミが落ちていない)
8)環境保全意識の高さ
9)食べ物のおいしさ、豊かさ、ヘルシーなこと 
10)伝統と現代の共存、外来文化への柔軟性
11)マンガ・アニメなどポップカルチャーの魅力とその発信力

以上は、これらは、日本を訪れたり、住んだりしている多くの外国人の感想などをもとにして、その最大公約数的なものを整理したものである。今後、さらに検討するなかで、変更したり、項目を細分化したり、追加したりするなどしていくつもりである。各項目ごとに詳しく検討していくことも考えている。

自信過剰にも自己卑下にもならずに

少し前に『「見えない資産」の大国・日本』の書評でも触れたが、日本人や日本文化がもっている「目に見えない資産」をしっかりと自覚し、それを意識的に維持して、さらに伸ばしていくことが、これからますます大切になると思う。

最近、それが少しずつ自覚化されつつあるのは、日本人の意識調査などからも確かだろう。そのひとつの理由は、海外でのアニメ・マンガや日本文化全体への人気(クールジャパン現象)が、インターネットなどを通して知られるようになったことかも知れない。それでもまだ日本人は、自分たちの社会や文化を過少評価する傾向の方が強く、自分たちの優れたところに充分気づいていないような気がしてならない。

もちろん自信過剰になってはいけない。かといって自信「過少」になるものこまりものだ。自信過剰は、前向きのエネルギーになることもあるが、独善にもなる。自信「過少」は、謙虚な向上心にもなるが、マイナスの内向エネルギーにもなる。どちらも、客観的な姿と「自己像」との間にずれがあるので、内に多少とも不安を抱え込むことになる。

自信過剰にも自己卑下にも陥っていない集団や個人は、自分に自分を偽らないだけ安定感があって、地に足のついたエネルギーを発することができるのではないだろうか。

しかし、自分たちの「客観的な姿」をとらえることは、言葉でいうほどに簡単ではない。他国との統計的な比較データなどがあれば、それがいちばん良いのだろうが、そうしたデータは限られたものしかないだろう。とくに「見えない資産」といわれるものは、客観的な数字としてとらえにくい面がある。

そこで、私がとりあえず考えている方法は、限られたデータなども参照しながら、本やインターネット上で公表された、外国人の体験談などをできるだけたくさん集めて、分類し整理していくことである。まずは、参考にできる本やウェブサイトの一覧をつくって見る必要があるだろう。

例としてあげると本で代表的なものは、『私は日本のここが好き!―外国人54人が語る』や『続 私は日本のここが好き!  外国人43人が深く語る』があるだろう。またウェブ上には、外国人の生の声を聞けるサイトが数多くあり、こうしたものもできる限り参考にする必要があるだろう。

日本の長所を自覚し伸ばす

誰でも長所と短所がある。得意分野、不得意分野があり、得意科目、不得意科目がある。自分をもっと伸ばしたい、進歩させたいと思うとき、まずは短所克服を考えるか、長所伸展を考えるか、これがかなり重要なポイントだ。日本人は、短所克服型が多いような気がする。

しかし、やっていて楽しく、やる気が増すのは、長所伸展の方だろう。自分の得意科目を勉強するのは楽しい。楽しいからかんたんに憶えられるし、効果も上がる。そうすると、ますます成績もあがる。自信も出る。その自信とやる気と成功体験を活かしながら、不得意科目にも取り組んでいく。これが船井幸雄のいう「長所伸展の法則」だ。(『長所伸展の法則』など)
 
私は、「長所伸展の法則」を日本人とその文化や社会にも応用していくべきだと思う。まずは、日本の長所とは何かをしっかりと把握すること。その上で、それをしっかり守り、ますます伸ばしていくこと。日本人は、自己批判の心が強すぎて、自分たちの文化や社会を必要以上に低く、価値のないものとして評価する傾向があった。そして自分たちの社会の素晴らしい面に無自覚で、自信がなかった。

最近、この傾向が少しずつ変り始めたようだ。若者を中心に、日本の文化や伝統に誇りを持つ割合が増えてきたようだ。もちろんこれはよい傾向なのだが、では日本の文化や社会のどのようなところがどのようによいのかとなると、それほど明確には説明できていないと思う。

今、マンガ・アニメを中心とした日本のポップカルチャーが世界中に広まっているが、その人気の背景にあるものは何かについても、私たち日本人自身が、あまりはっきりとは分かっていないように思う。

日本の文化や社会の「長所」とは何なのか。それをはっきりと自覚した上で、それを守り、さらに伸ばしていく。このブログでは、そのためにも日本がなぜクールと受けとめられるのか、それを探求していきたいのだ。