2017年2月22日水曜日

11項目の長所を具体的に見る(1)

日本人にとって当たり前と思われていることが、実は世界にとって当たり前ではない。それでいて日本人は、そのことの重要性をあまり気づいていない。しかし今、日本人自身が自分たちの文化やそのユニークさとその意味をもっと自覚すべきときに来ていると思う。日本の社会や文化、そして日本人の人間関係に含まれる見えない長所、日本人が多かれ少なかれもっている道徳心、好奇心、改善や創意工夫の意識、仕上げに凝る、仲間を助けるなどの姿勢などを、日本人はしっかりと自覚し、それを守っていくことがますます大切になっている。

それらは、日本人にとって当たり前すぎることなので、これまではきちんと分析して対象化する必要など感じなかったかもしれない。しかし、自分たちの文化や伝統にどのような意味と価値があるのかを知らずにいると、グローバリズムという名のもとに国外から押し寄せてくる変化の波によって、それらがかんたんに失われてしまい、取り返しのつかないことになる。だからこそ、これからはそれらがどれほど「価値ある資産」としてプラスの意味をもっているのかを、分析し、可視化し、体系化することがきわめて重要となる。分析され、その資産としての意味が自覚化されることで、その長所を守り、さらに活かし、伸展させていく方法も見えてくるからだ。

私は、これまでこのブログで、不十分ながらそのきっかけとなるような試みをしてきた。たとえば日本の長所として次のような11項目を挙げて見た。これらは、日本を訪れたり、住んだりしている多くの外国人の感想などをもとにして、その最大公約数的なものを整理したものである。

1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 
3)治安のよさ、犯罪率の低さ 
4)勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること
5)謙虚さ、親切、他人への思いやり
6)あらゆるサービスの質の高さ
7)清潔さ(ゴミが落ちていない)
8)環境保全意識の高さ
9)食べ物のおいしさ、豊かさ、ヘルシーなこと 
10)伝統と現代の共存、外来文化への柔軟性
11)マンガ・アニメなどポップカルチャーの魅力とその発信力
今回は、このうち1)から4)の項目を具体例を示しながら見てみよう。

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1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 

日本人が、礼儀正しく、またその行動に規律や秩序があることは、多くの外国人によって繰り返し指摘されており、いまさら取り上げる必要もないほどだ。ここでは二つだけ関連する記事を取り上げる。
◆米エクスペディアホールディングスが世界各国のホテルマネージャーを対象に行った国別観光客のイメージ調査において、日本人が去年まで3年連続で『世界最良の旅行客』に選べれている。

日本人観光客は「礼儀正しい」、「行儀の良さ」、「部屋をきれいに使う」、「騒がしくない」、「不平不満が少ない」の5項目において一位を獲得しての受賞であったが、『日本人のマナー』は世界各国で定評があるようだ。今年も同様の調査が行なわれて発表されたのか、調べてみたが、見つからなかった。ちなみに、2009年発表のものについての記事をリンクしておく。
日本人が3年連続で「世界最良の観光客」に――海外ホテル予約のエクスペディアが発表・2009年7月13日

あるアメリカ将軍の驚き
『世界中にアメリカ軍の基地があるけれども、朝八時半に従業員が全員来る基地は日本だけです。つまり遅刻がない。それは日本だけです。五時半に帰ったあと、備品が一個もなくならない基地も日本だけです。』
日本人の人間観・その長所と短所(2)
性善説に立って人を信用することを前提とした社会、基本的に人を信用して行動する関係。これが日本社会の秩序や治安のよさに関連していると思われる。

3)治安のよさ、犯罪率の低さ
「これまでに、パリ、ベルリン、ロンドンにも住んだことはありますが、東京の安全性は特別です。通常、大都市で生活するときは緊張が伴います。街を歩くとき、基本的には行き交う人々と視線を合わせないほうがいいと言われています。しかし、東京では初めからそうした緊張は感じませんでした。新宿や渋谷など、いろいろな人々が行き交う繁華街でさえも、大都市で安心して生活でき――そうした素晴らしい気持は、東京でしか感じられません。」(フランス人女性『続 私は日本のここが好き!  外国人43人が深く語る』より)

「イギリス人の父がいっていたんですが、父が日本に来た理由というのが、最初は転勤であったにもかかわらず、仕事まで辞めて日本に移住してしまったのは、安心して暮らせるからということだったんです。‥‥父はロンドン出身で、僕も幼い頃、そこに暮らしていたが、治安の悪い場所だったんです。母が毎日、買い物に行くと誰かにレイプされるんじゃないか、ひったくりに遭うんじゃないかとくことを、心配しなくてゃいけないところだった。それが日本に来たら、ビーチに行ってもそのまま浜辺に荷物を置いていられるとか、ロッカーの鍵をしまなくても盗まれないとか、電車に乗っていてもひったくりに遭わないとか。父は、家族を育てるのであれば、そういう心配がないところがいいと思い、20年以上も日本に居住することになってしまったわけです。僕も安心して暮らせるというのが好きですね。」(日本人母とのハーフの青年『ハーフはなぜ才能を発揮するのか (PHP新書)』より)

なお、日本はかつては安全だったかもしれないが、最近は犯罪率も増加しているというのは、間違った印象に過ぎないので、以下をご確認いただきたい。日本の犯罪認知件数・検挙件数等

 4)「勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること」に関連するもの。
日本人のここが好き
「国民全員が国の現実に責任を負っているのだ 真面目で勤勉、そして「質」をとても大事にすると思います 皆が一体となって一つの事に立ち向かい、成功させていくことが、日本人が自分の仕事に責任感を持ち、夢中になっているかということ」
日本人の仕事への責任感は世界一
 「どれほど日本人が自分の仕事に責任感を持ち、夢中になっているかということ。日本人はそのことに誇りを持って欲しい。世界的に素晴らしい現象なのだから。自分の仕事に誇りと責任を持つという点で、世界一なのだから。その素晴らしさを意識してほしい、ということであった。」
平凡な日本人のレベルの高さ

引き続き、『続 私は日本のここが好き!  外国人43人が深く語る』から、日本人の仕事への態度を評価する事例を紹介しよう。

「まず、第一に日本人の仕事への熱心さです。これは、私の家族がインド料理のレストランをやっていて、日本の人たちと一緒に働いているので特に感じることです。もちろん、私の家族たちも一生懸命働いています。でも、それは私たちのお店だからです。日本人たちは、雇われて仕事として働いているにもかかわらず、同じように一生懸命働いてくれます。夫は日本人の仕事に対する誠実さや真面目さを、とても信頼しています。店でアルバイトの人を雇う時には、知り合いのインド人より、知らない日本人の方がいいと言っています。日本人の真地面な仕事ぶりに関心し、ちゃんと働いてくれると信頼しているからです。」(インド人女性、夫のレストラン手伝い、滞在4年)

さらに、店の改装をした時にも、インドとはまった違っていて驚いたという。夫が現場に行ったのは、改装開始時と終了時の二回だけ。それでも約束の期日に完璧に終了していた。インドだったら、工事中に夫がずっと監視していないと、進行が極端に遅くなってしまう。日本では、こういう仕事でも、安心してすっかり任せておけるのかと本当に驚いたというのだ。

「私が日本で特に素晴らしいといつも関心している様々なことは、すべて、この『日本人の仕事への誠実さ』によってもたらされているのだと気づきます。電車やバスが時間どおりにちゃんと来ることや、日本製のモノの品質が信頼できることや、店や通りがいつもきれに保たれていることなど、日本のいいところすべてに、共通して現れています。一人ひとりが、誰にも見られていなくても、自分のやるべきことをやろうと真面目に努力している。それが日本をここまで進歩させた、優れた国にしたのだと思います。」(同上)

もういくつか例を引こうと思っていたが、長くなったのでここで止めておこう。ここでは、こうした日本人の特徴がどこから出てくるかに、かんたんに触れておこう。その根底にあるのは、やはり日本人が異民族によって征服、支配された経験を持たなかったことだろう。それが日本を、階級に分断されな平等社会にした。一部のエリートによって動かされるのではない庶民中心の社会にした。だから庶民は、どんな仕事をするにせよ、自分たちがそれを作っている、世に送り出している、社会の一角を支えているという「当事者意識」(責任感)を持つことができる。自分の仕事に誇りや、情熱を持つことができる。奴隷は、そういう意識を持つことができない。日本のユニークさは、奴隷制を持たなかったことにも、ひとつの要因があると思う。

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